Ci/GLI
 
図1
<図1>

1.RNAiと動物細胞のインターフェロン応答
 私達の研究室ではCBP, Shn family, ATF-2 family, ski family, myb family など多くの変異マウスを作製してきましたが、これらの変異マウスを通常のES細胞における相同組み換えを基にした方法で作製するには通常1年以上の期間を要します。また組織特異的knock-downマウスの作製にはそれ以上の期間が必要です。そこで、より簡便に変異マウスを作製するためにRNA interference (RNAi)を用いた方法の開発を試みました。RNAiはもともとショウジョウバエや線虫で見い出された現象で、細胞内に長いニ本鎖RNA(ds-RNA)が存在すると、それと相同配列を持つmRNAが分解されるものです。長いds-RNA はRNase IIIタイプのRNase(例えばDicer)によって21〜26ヌクレオチドの短いRNA(siRNA: small inhibitory RNA)に切断され、これがRISC複合体に取り込まれ、相同配列を有するmRNAとアニーリングします(図1左)。現在ショウジョウバエや線虫ではds-RNAを細胞に導入することによって、任意の遺伝子の発現を抑制することができます。しかし、動物細胞では細胞質に長いds-RNAが存在すると、ds-RNA依存性キナーゼが活性化され、蛋白質合成が抑制され、インターフェロン合成が誘導されると共に、mRNAの非特異的な分解が起こり、アポトーシスが誘導されます(図1右)。これは動物細胞がウイルスに対する防御メカニズムとして進化の過程で獲得してきたもので、インターフェロン応答と呼ばれています。従って、動物細胞では長いds-RNAを細胞質に発現させることはできません。

2.pDECAPベクターの開発とSki knock-downマウスの作製
図2
<図2>
 私達はインターフェロン応答なしに組織特異的にRNAiを誘導できる新規ベクターpDECAPを開発しました(G&D, 2003)。組織特異的にsiRNAを発現するには、RNA polymerase II(Pol-II)で認識されるプローモーターを用いる必要があります。現在一般にsiRNAをhairpin formで発現させるためにはPol-IIIプロモーターが使用されていますが、このプロモーターはすべての細胞で働くため、組織特異的発現は不可能です。しかしPol-IIプロモーターからの転写産物は5'末端にCap構造と3'末端にPoly(A)鎖を持つために、速やかに細胞質に運ばれます(図2中央)。私達はCap構造をはずすために転写開始点のすぐ下流にRibozyme siteを、またPoly(A)鎖が付かないようにするためRNA polymeraseを停止させる機能を持つ転写因子MAZの結合配列を下流に挿入したベクターを作製しました(図2上)。このベクターに500-bpのcDNAをinverted repeatの形で挿入すると、ds-transcriptsはMAZ site 上で留まり、核内にも存在するRNaseで短いsiRNAに切断され、siRNAは細胞質へdiffuseし、インターフェロン応答なしにRNAiが誘導されます。私達はこのベクターをpDECAP (Deletion of cap and polyA)と名付けました。
図3
<図3>
実際に、コリプレッサーSki の500-bp cDNAを挿入したpDECAP-Skiは培養細胞において、Ski mRNAの分解を促進し、Ski 蛋白質のレベルを低下させました(図2下)。また、この時インターフェロンの誘導は見られませんでした。次に、ほとんどのEmbryo 組織で機能するPol-II プロモーターであるCMV プロモーターを有するpDECAP-Skiのトランスジェニックマウスを作製しました。期待通りpDECAP-SkiのトランスジェニックマウスはSki KOマウスと同様の神経管閉塞異常の表現型を示しました(図3)。このように、pDECAPベクターを用いることにより、組織特異的変異マウスが短期間で作製し得ることが示されました。現在私達は多くの組織特異的プロモーターを用いて実際に変異マウスの作製を行いつつあります。


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